こんにちは!CHINTAIスキークラブ・スタッフです。

今回は、スキージャーナリスト・岩瀬孝文氏による「 第23回伊藤杯シーズンファイナル大倉山ナイタージャンプ大会 」のレポートをお届けします。

最後まで貫いた攻めの姿勢

最終戦を前に、今シーズン限りでの引退を表明した茂野美咲。

「シーズン中、うまく飛べなくて悩んで落ち込んでいましたが、テストジャンパーとして北京オリンピックへ行かせてもらい、オリンピックのジャンプ台を飛んでみて、そうだとひらめいて。それが今、生かされていると思います」

そう語る今の茂野ジャンプは、とても軽やかに、空中でゆったりとした良いイメージで風に乗っていた。実際に先日行われた宮様大会ラージヒルでは、同大会4連覇を成し遂げることができた。

「もっと早く、このジャンプができていれば…」

悔しそうな声でそうつぶやいたが、すぐに「これが、いまの自分の実力なんです。」と、冷静に分析しその場を後にした。27年にも及ぶ競技人生のラストは“4位”と、あと一歩表彰台に届かなかったが、幾度も優勝争いに加わり攻めの姿勢を貫くその姿は、成績以上に見る者の印象に残り、また後輩たちにもたくさんのことを伝えてきたに違いない。

「自分らしい最後」と笑顔を見せた茂野

溢れる思いを胸に

前の試合、宮様大会ラージヒルでは惜しくも2位表彰台。この伊藤杯ファイナルでしっかりとラストを飾りたいと願った小林諭果。

「シーズンの中で、こうすればよかったなど、いろいろと反省する部分もありますが、今シーズンはたくさん勝つことができてうれしかったです。ただ、ワールドカップポイントが欲しくてたまらないですね。それがとても悔しくて。これからも1試合ごと着実に前進していきます」

1本目124m、2本目116mと勇躍ジャンプをみせて2本ともに1位で完全勝利を決めた。

最後はフィニッシュエリアで茂野と抱き合い号泣していたが、しばらくして心が落ち着くと、その目はしっかりと前を見据えていた。

優勝が決まった小林に駆け寄る茂野
圧巻のジャンプで優勝を飾った小林

伊藤杯シーズンファイナルは、シーズン国内最終戦で、今シーズン限りで引退する選手たちの雄姿を見届ける最後の場となる。今シーズンは10人余りの選手が選手人生に別れを告げた。試合中は“札幌ノイズチーム応援団”のアップテンポな太鼓と笛が、いつもと変わらず大倉山に大きくこだまし、選手の背中を強く、そしてあたたかく押していた。

「あの、自分の名前が刻み込まれた旗を見ながらジャンプできたのはとても幸せでした。宮の森でも大倉山でも名寄でも、あの大きな旗を目にするたびに気持ちが奮い立たされました。」

引退式では、茂野らしく笑いあり涙ありで思いの丈を述べた。最後の最後まで、女子ジャンプ界の“ムードメーカー”として、しんみりしすぎない空気づくりをしてくれていた。

次に会うときはどんな姿で会えるのであろうか。長年、女子ジャンプ界をけん引してきた選手である。いずれは子供たちのジャンパーを引率してくるコーチとして、朝日町や新潟塩沢に笑顔ではっぱをかけている姿を見てみたい。そういうのも、じつに楽しみである。

小川孝博コーチ・茂野・小林を囲むCHINTAIスキークラブ応援団一同

3月18日「 第23回伊藤杯シーズンファイナル大倉山ナイタージャンプ大会 」

 茂野 4位 1本目 81.8P 2本目 80.7P 計 208.9P

 小林 1位 1本目 93.6P 2本目 98.8P 計 207.5P

文・写真/岩瀬孝文

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