CHINTAIスキークラブ「ジャンプ通信」

スキージャーナリスト・岩瀬孝文氏によるスペシャルレポートをお届けいたします!

是非ご覧ください。

向かい風に乗って

ここまで降雪と強風に悩まされた今年の宮様大会、宮の森ノーマルヒルシャンツェだった。

雪印カツゲン杯は強風のためにまたされながら1本勝負になり、札幌五輪記念は朝からの強風で、公式トレーニングもできずに翌日に順延となった。

 3試合目の宮の森ノーマルヒル、小林諭果(CHINTAI)は1本目91mで2位につけた。

続く2本目には風が弱まって81mと飛距離を落としたが、着地でしっかりとテレマークをいれて第3位に入った。

「いつも全試合に優勝するつもりで出ていますが、なかなか頂点に立つことができなくて、もどかしさを感じています。この宮様大会ノーマルヒルでは、ノルディック複合の選手に負けている時点で、よろしくない状況にあると思います。それでも表彰台へ昇れたのは、ひとつの結果として良かったです」

少しばかり無念そうな表情をみせた小林選手。

強風や、時としての横風、それから風が止むこともあった。この宮様大会は、荒れた気象と相まみえた試合となっていた。

つねに上を見て

連日、コーチボックスでスタートの旗を振る一戸コーチが述べる。

「今週初めからの2試合で、要所で良い風に助けられたジャンプもあった。どちらかというと踏み切りから前方向へ飛び出して、そこから風任せになったようなジャンプの印象がある小林選手。そこではしっかりと上に飛び出す、助走路に垂直方向へ力を伝えることが大事で、これは練習ではできているが、試合では前へいっていしまう。その点が、もう少し修正できると良くなっていきます。現在は、いくらか前に突っ込んでいく感覚が残っているようでもあり。空中も低めで、スキーも下がり気味になっていて。そのあたり、もう少し上げていかないといけません」

冷静に分析して、すぐに修正できる課題を示した。

 さらに小林選手が得意とするラージヒルについて、積極的に飛ぼうと激励する。

「ここまで連日、飛んでいた宮の森ノーマルヒルはよりよい練習になっていました。そこで次の大倉山ラージヒルの良風を活かして飛距離を伸ばしていってほしい。また、つねに上を見て進んでいくことを望みます。それはW杯ポイントを取ることですが、その上をも目指してほしい。大きな目標を持って、ラージヒルをおおらかに飛んでいってほしいと思います」

翌日の宮様大会、得意とするラージヒル札幌大倉山では、1本目に101mで6位。

そこから2本目には大倉山の良い風に乗り115mを飛び、順位を上げて4位に入賞した。

「1本目も悪くはなかったと思います。2本目は風を感じることができました。1本目は考え過ぎた分、動きは悪くないのですが、たぶんちょっとのずれだと思いますが、公式練習のアプローチにおいて上手くG(助走路からの返り)を感じられなくて、それを感じようと懸命になり過ぎていた反省もあります。総合的には2本とも上手くまとめることができました」

シーズン仕上げの試合として挑んだ宮様大会ノーマルヒルとラージヒルだった。

そこで目の前の課題をこなしながら、連戦に備え、飛んでいった。

一戸選手は着実に前進

終盤戦は、ジュニア世界選手権個人戦4位の好成績もあり海外遠征メンバーに選出されて、W杯を転戦している一戸くる実(CHINTAI)は、初戦のフィンランド・ラハティW杯にて予選を通過、27位に入り見事にW杯ポイントを獲得した。

「ようやくポイントを取ることができました。12月の海外遠征においていろいろなことを経験できたので、今回の遠征では、そのことを踏まえて、さらに頑張れると思います」

一戸選手は着実に前進していると語る一戸コーチだった。

2月末から3月にかけて2度ほど降雪があり、大倉山ラージヒルでの伊藤杯ファイナル大会は開催の方向にある。もちろん小林選手は抜群の飛距離で優勝を狙い、今季限りで引退する10数人の仲間の選手たちを見送る。

そしてW杯でオスロ・ホルメンコーレンの名門台や次回2025世界選手権開催地トロンハイム(ノルウェー)の新設台を飛ぶ一戸選手は、ひとつでも順位を上げて確実にW杯ポイントを取りたいと、日々ランニングとコンディショントレーニングなどを熱心に行ない、現地で努力を積み重ねている。

文・写真/岩瀬孝文


大会結果

■2024年3月1日(金) 第95回宮様スキー大会競技会 ノーマルヒル競技  

  3位 小林諭果

■2024年3月3日(日) 第95回宮様スキー大会競技会 ラージヒル競技  

  4位 小林諭果