CHINTAIスキークラブ「ジャンプ通信」

スキージャーナリスト・岩瀬孝文氏によるスペシャルレポートをお届けいたします!

是非ご覧ください。

勝負を仕掛けて

新潟の大会にはそれぞれに特色があった。

ひとえに、観客の皆さんは静粛に観戦して、飛距離が出たジャンプには拍手でそれを讃えていた。口々に、やったとか頑張れと叫ぶわけでもなく、選手たちのジャンプに想いを込めて、すごいねと感じ入り、たまにその大らかなジャンプに夢まで乗せていたようだ。

上越の妙高高原ノーマルヒルは、かつてインカレや国体が行われていた由緒ある台である。

しかも新進気鋭な新潟県スキー連盟競技本部長は、五輪日本代表のクロスカントリースキーで名を馳せた横山寿美子さん。将来性豊かな若い選手たちに暖かい目を注いで表彰台のプレゼンターを務めていた。それゆえ新潟の女子ジャンプ選手もだいぶ増えていた。

今季2回目の欧州サマーグランプリへの出発を目前にして、最終調整に余念がない一戸くる実(CHINTAI)は、連戦連勝を飾るベテランの伊藤有希選手(土屋ホーム)に飛距離で追いつきたいと願いながら3位表彰台に立った。

「世界で闘うためにはW杯トップクラスのユウキさんの近い位置まで上がっていかなければなりません。それに、海外の強い選手をただ眺めているのではなく、勝負を仕掛けていきたくて。なので、もっと技術を上げていきたいです」

そのようにしっかりとした目標を胸に抱いていた。妥協することなく貪欲に先を見据える一戸選手だ。

特徴ある右寄りのジャンプをひとつのテクニックと捉え、白馬ラージヒルでは右下で伸びていくジャンプが飛び出し、それもまた良い個性であると前向きに捉えた。



時間をかけてじっくりと

ここにきて、いよいよ筋力トレーニングが実を結んできた小林諭果(CHINTAI)は、それこそ得意とするロングジャンプの片りんが見られるようになった妙高高原での9位。

いよいよ空中における懐の深さが見て取れた。あとは好ましい向かい風が吹き付けてくれると、さらにシャープな長身の小林選手らしい長距離飛行が観られる。

ともすれば目の前の成績に一喜一憂してしまいそうだが、冬に雪上で、かっ飛びのジャンプ、それを念頭に置いて、現在はまだ時間をかけてじっくりとトレーニングを続けている。

「10月には白馬で全日本選手権があります。そこでまずは良い成績を残すことが肝心です」

内地での大会成績は、連続したひとけた入り、さあ、これからである。



スーパーで、エクセレントで、そして最上級のマーベラスなジャンプ!

場内アナウンスが現場の勢いを盛り込みながら紹介する。それが妙高高原ならではの試合。選手たちは表彰台で幾人も、次はマーベラスなジャンプで優勝を狙いますと、にこやかに言い放ち、会場を笑顔で沸かせた。

また先の塩沢石打エイブルCHINTAI杯においては、地元のジャンプ指導者であるしみず整骨院院長による心和むマイクパフォーマンスがあり、今日もお弁当とおにぎりのお米が美味しい。そんな郷土色が豊かな新潟の大会であった。

試合後、観客にポストカードを配る小林選手
試合後、観客にポストカードを配る一戸選手

文・写真/岩瀬孝文


大会結果

■2024年9月8日(日) ミタカカップ第24回妙高サマージャンプ大会 

  3位 一戸くる実

  9位 小林諭果