CHINTAIスキークラブ「ジャンプ通信」
スキージャーナリスト・岩瀬孝文氏によるスペシャルレポートをお届けいたします!
是非ご覧ください。
巨大な白馬シャンツェ
五輪開催地の長野県白馬村には巨大な白馬シャンツェがある。
その昔、1998年には、ここで日本チームが団体戦金メダルを獲得した由緒ある台だ。
いまはアプローチにアイストラックを施し最新の形状にした。その左側サイドに立つ、白馬スキークラブのベテランの方々が早朝から賢明に選手のジャンプを見届け、電光計測サポートにあたっている。
この春から、往時の現場を知る村役場の懐かしい人々が役員として何人も戻ってきていた。
そこで規律ある試合が行われ、記録をかけた選手たちが勢いよく飛び出していく。
初日のジャンプ記録会とは、スポンサーがつきさえすれば正式な大会となるべく長年準備されてきたもの。そして2日目が公式試合の白馬ラージヒル2023だった。
以前に他地域で行われた試合にて、男子で有力選手が転倒して膝に大けがを負い白馬の試合を欠場していた。そのため競技運営には極度の注意が払われ、それでも午前中から荒れる風に見舞われたいつもの白馬である。ウインドファクターが入れられたとはいえ、安全で公平な試合には、度重なる中断と適宜な散水が必要不可欠だった。
そこで会場がヒートアップする120mオーバーのビッグジャンプを連続して生み出すのではなく、あくまで的確なジャンプを2本揃えて表彰台に上がらせるという、安全性を重んじた実直な大会でもある。TDを務めたFISの成田収平さんは、風を読んだそれこそ慎重を期した運営を演出して、成功をみた。
「ジャンプ後半の良い風に助けられたので、うれしく思います。そういった風や運も実力のうちと割り切って、もともと大好きなラージヒルですから、これからも思い切り飛びます!」
暑さの中、抜群の集中力で軽やかにサッツを切った小林諭果(CHINTAI)は、中間から100mにかけて鋭いままに風を掴んでいた。
普段から白馬で合宿トレーニングを積んでいるとはいえ、ラージヒルにおいてときとして前後左右に入り乱れた風を乗りこなすのは至難のわざだ。
「どうしても白馬は難しいジャンプ台に位置づけられます。どちらかといえば札幌大倉山の方が飛びやすく感じています」
前日の記録会で3位に入り、気迫を込めて連続の表彰台を狙ったが、その前日の悔しさから奮起をみせた選手に追い上げを許して「あーっ」と、ため息にくれた。
春先からの筋力トレーニングに成功を見て、より良い筋力がついた小林選手は、肩の力を抜き、やや口をすぼめながら首筋に少しだけ力を入れて、力みなく空中を進むパワージャンプを身に付けていた。そして打ち出した3位表彰台と惜しい4位だった。
この先の小林選手の試合は、小さな頃から飛び慣れている秋田県鹿角市だ。ここではジャンプ技術の確認には、うってつけの小ぶりな台でもある。そこで冬に向けて伸びやかに飛んでいきたい。
文・写真/岩瀬孝文
大会結果
2023年9月9日(土)
2023サマーノルディックフェスティバルスペシャルジャンプ記録会
3位 小林諭果
5位 一戸くる実
2023年9月10日(日)
2023白馬サマージャンプ大会
4位 小林諭果
6位 一戸くる実