CHINTAIスキークラブ「ジャンプ通信」

スキージャーナリスト・岩瀬孝文氏によるスペシャルレポートです。是非ご覧ください。

シーズンの終盤戦

シーズンの終盤戦3月になると、宮の森でノーマルヒルの試合が続く。

それも伝統あふれる札幌五輪記念と宮様大会の連戦だった。

「1本目は高いジャンプで勢いがありました。それと動きも悪くなく、高くて気持ちよく飛んでいけて。スタートでは1分くらい風待ちして、それが弱まった時に出されました。もともと、風が強いのは得意ではないんです。それでも2本目の踏み切りのタイミングが1mも遅れてしまって、普通に飛べば勝てたのに」

この2連戦の初戦で新進気鋭の一戸くる実(CHINTAI)は1本目92mを飛び抜け、優勝のチャンスを迎えたが、2本目にサッツのミスで86mに終わり2位となった。

「目の前で、先に飛んだ岩佐さんに96.5mの大きなジャンプを見せられて、私も、よし、頑張ろうと力が入りました。そのあたりまだまだですね」

その反省しきりで試合をものにする力強さが欲しいと、悔しさに包まれてしまった。

「W杯の後半戦は、勝ちを狙いにいくというよりは、いま世界でどのくらいやれるか、これまでやってきたことをW杯でしっかりと発揮したい目的があります」

成田空港からヘルシンキを経由して女子代表チームに合流、そこから名門オスロ・ホルメンコーレンの台を飛ぶ。いずれ、これらのたくさんの悔しさが良き糧となるのが見えてきている一戸選手だ。

ノーマルヒルにおいても良い結果を出さなければと踏み切ったが、1本目、失速ジャンプ気味に74.5mで7位となり、そこから意地をみせて5位まで浮上した小林諭果(CHINTAI)は、その2本目に2位となる86mを飛んでいた。

「2本目には気持ち良く飛べたらなあと思いました。いい風が吹いてほしいと願っていて。それにも乗ることができました」

冷静に分析して、しっかりと挑んだ2本目だった。その後にも、シーズン後半に体幹を鍛え直す必要性を語り、やる気に満ちていた。

その宮の森シャンツェのめまぐるしく変わる風を一瞬に捉えて、ていねいなジャンプを見せてしっかりと飛距離を伸ばし、宮様大会へ今日の2本目の勢いをつなげていった。

続く5日に開催された宮様大会ノーマルヒルの試合では、風の変化が激しく、しかも上と下での方向の違いなど、かなり難しい風の中での試合となった。

このところ2本目に落ち着いて特に80m後半あたりで伸びていく小林諭果は93mを記録!

「今日も下の良い風をもらいましたね」

と謙遜しながらもノーマルヒルのジャンプ後半に着実に風をつかみ、そこで抜群の集中力を発揮して、大きく飛距離を伸ばしてきた。そのテクニックの高さをみせて勇躍の2位表彰台へと立った。

さらに2本ともに3位と揃えた一戸くる実も、表彰台に昇った。

「でも、なんだかパッとしなかったです。本当に良かったと思えるジャンプをしたいのです。それにアプローチスピードが遅いのが気になります。あとは空中姿勢が良くなっていくと、もっと良くなって」

この先、直していこうとする部分を次から次へと口にした。それはジャンプに対する意欲の表れであった。そのダイナミックな空中の印象としても、左右の腕が開いているから、そう見えるだけで手を付けて飛びたいと。そこで思い切りよく飛翔していきたいというポジティブさに包まれていた。

文・写真/岩瀬孝文

大会結果

2023年3月1日(水)

第51回札幌オリンピック記念スキージャンプ競技大会

小林諭果 5位

一戸くる実 2位

2023年3月3日(金)

第94回宮様スキー大会国際競技会 ノーマルヒル競技

小林諭果 2位

一戸くる実 3位