CHINTAIスキークラブ「ジャンプ通信」
スキージャーナリスト・岩瀬孝文氏によるスペシャルレポートをお届けいたします!
是非ご覧ください。
核心にはもうひとつ
長期に渡る欧州遠征から帰国した一戸くる実(CHINTAI)は疲労感にまみれての札幌入りだった。その時差ぼけもあり、いくらか身体が悲鳴を上げてもいた。
また集中すべき大事な試合前などに、たくさんのことを考えなければならないアクシデント的なものが重なり、ついには2本目に進めなく終わった。
そして用意されたW杯2試合目に輝くエイブル緑色ビブを身に付けられなかったのだ。
このチャンスを逃すのは実に残念なことだった。
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「札幌W杯を振り返ると、直前の国内大会(HBC杯)で転びそうになって、自分としてはあまりいい印象が持てなかったのです。ここというときに力を発揮できず本当に悔しくて。
蔵王W杯までは1本も飛べなかったのですが、良いジャンプのイメージと技術的にやりたいことをいろいろとリストアップして、それらを意識して飛んでみたところ、上手くいってとても自信ある蔵王の試合になりました。
このときは他に考えなければならないことがたくさんあって、ジャンプオンリーの頭にするのが難しくなり、それを修正するのに、脳がパンパンで空きがなくて困りました。まだ一か八かで飛んでいますが、核心にはもうひとつなんです。」
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「これから後半戦では世界のトップ10を目指していきたいです。ただ成績だけを気にしているとジャンプがダメになるので気を付けます。海外の試合で一度、心が落ちてしまうと戻るのは難しくなります。それを避けながら、ぎりぎり踏みとどまる最低ラインをどんどん上げていくことが大事なのです。蔵王での個人戦20位は1本目が良くて、2本目に乱れたその悔しさがありますが、まずはW杯ポイントが取れて、それで次につながっていくと思います」
欧州W杯の間には、ほとんどプラニツァにある日本チームの定宿において合宿生活をしていることがままある。そこで練習を続けながら身体の調整を施し、ヨーロッパ各国で開催されるW杯へ移動。ドイツやオーストリア、ノルウェーとフィンランドなどと、今季はアメリカのレイクプラシッドへもW杯遠征を重ねる。
![](https://chintaiski.jp/wp/wp-content/uploads/2025/02/DSC_6792蔵王W杯一戸くる実2025iwase-896x1024.jpg)
一瞬を掴んで予選を通過
良風が吹いてくれば経験豊富な小林諭果(CHINTAI)は、その長身を利して飛距離が出る。蔵王W杯予選もその一瞬を掴んで予選を通過。そして狙うはW杯ポイントの獲得であったが、いかんせんアプローチスピードが出にくいW杯のローゲート設定、スピードに乗れることなく2本目に進めずだった。ともすれば風の勢いに任せたジャンプとも表現されがちだが、空中で風を掴む好ましいテクニックを有する。
![](https://chintaiski.jp/wp/wp-content/uploads/2025/02/DSC_5682蔵王W杯小林諭果2025iwase-1024x550.jpg)
「小林選手は、夏よりも全然よくなってきている。それと継続して筋力トレーニングをやっている。ただ技術的なずれがある。風に左右されるジャンプながら、何本もいいジャンプが出てきている。国内の試合では風の影響を受ける試合の札幌で、いい飛びを見せて、これを繋げられるようにやっていくこと。それが今後のキーポイントになってくる」
冬に調子を上げてきた小林選手に期待を寄せる一戸コーチだ。
![](https://chintaiski.jp/wp/wp-content/uploads/2025/02/DSC_5820蔵王W杯応援旗2025iwase-1024x735.jpg)
長期遠征へ
この先は、再度W杯で長期遠征に出ることが決定した一戸選手。それは2月のビリンゲン(ドイツ)から3月のラハティ(フィンランド)まで長期間だ。
「年明けのHBC杯で転びそうになってから調子を崩しがちになり。そのもの技術的なことで突き詰めて話し合って、それで修正する点を発見。次の蔵王では夏にやってきたことを確認して上手くいきました。右寄りに進みながら、とにかくどのような条件の下でも“力むことなく”飛んでいくと充分にいけると思う。
いまはW杯でトップ10に入りたいと願う。ジュニア世界選手権でともに闘っていた海外の同じような年齢の選手が、すでにもうW杯で10番台に入ってきている。そこで負けまいと積極的に狙っていかなければならない」
一戸コーチが冷静に後半戦を分析する。
![](https://chintaiski.jp/wp/wp-content/uploads/2025/02/DSC_5983蔵王W杯一戸くる実2025iwase-1024x1024.jpg)
日本チームの現在のメンバー5人で後半のW杯海外遠征をまわることか決まり、その遠征の生活にも慣れてきている一戸選手だ。つねに自分のやるべきことに集中して、それができてくると、さらに、良い方向へと進んでいけそうだ。
文・写真/岩瀬孝文
大会結果
■2025年1月18日(土) VIESSMANN FIS スキージャンプワールドカップ 女子個人第11戦 札幌大会
33位 一戸くる実 [1本目103m(24番ゲート) 2本目 ーーー ]
予選敗退 小林諭果
■2025年1月24日(金) VIESSMANN FIS スキージャンプワールドカップ 女子個人第13戦 蔵王大会
20位 一戸くる実 [1本目88.5m(25番ゲート) 2本目87.5m(27番ゲート)]
38位 小林諭果 [1本目69.5m(25番ゲート) 2本目 ーーー ]
■2025年1月26(日) VIESSMANN FIS スキージャンプワールドカップ 女子個人第14戦 蔵王大会
29位 一戸くる実 [1本目74.5m(27番ゲート) 2本目78.5m(29番ゲート)]