CHINTAIスキークラブ「ジャンプ通信」

今シーズンも、スキージャーナリスト・岩瀬孝文氏によるスペシャルレポートをお届けいたします!

是非ご覧ください。

 にこやかな顔に出会えた

この夏、国内でようやく、ふたりの素直で、にこやかな顔に出会えた。

それもサマーグランプリ欧州遠征において、連戦となった五輪シャンツェのクーシュベル(フランス)とシュチルク(ポーランド)で見事にひとけた入り、ものすごく良い経験を積み上げてきた。

 「今日はどうしても表彰台へ昇りたかったんです。それなのにいつもの悪い癖が出てしまって。我慢できず簡単にジャンプをまとめての着地。悔しいです!もっと風を受けて伸ばしていけるのに。今後、海外遠征メンバーに選ばれると、また、いろいろなジャンプ台を飛びこなして、対応能力をアップさせていきたく思います」

実直さながら、気を引き締めながらしっかりと語る一戸選手である。

前日のトレーニングは落雷と大雨のため1本のみ、その感覚を日本のジャンプ台へと戻すのに精一杯な状況。しかも試合当日も2本目の時間帯で落雷が予測されていたため、公式練習がキャンセルされて、いきなりの試合開始となった。女子のエントリーは29名。

会場では有料の観客席が設置され、それも完売。蒸し暑さの中に団扇をパタパタさせる音がジャンプ台の谷間に心地よく響く。

 試技が行われない一発勝負において、無風というまったくの不運に見舞われてしまう。

そこで勢いよく飛び出したとしても空中で好ましい向かい風がなければ思うような飛距離出てくれない。これが小林選手の1本目であった。

 「サッツで立つ方向を踏まえ前にかけて(進めて)いく流れがあって、2本目は気持ちよく飛べたのですが、やはり1本目は苦しかったです。それと海外遠征では新しいルールを体現できて、スーツの股下が伸びたことについては、今後の対応と工夫が必要です。あとはまだ技術が足りていません。なので、もっとトレーニングを積み重ねていきます」

少しだけ憮然としたニュアンスの小林選手は、静かに応えてくれた。

 そこで今日一番の集中力で飛び抜けた2本目に90m付近まで伸ばして、ようやく笑顔が見られた。ただ、上位入りは難しく、ひとしきり悔しさにまみれた蔵王となった。

山形蔵王大会の後は、新潟県塩沢石打、久しぶりの妙高高原、長野県白馬との転戦が控える。

ゆえに、この先の上昇と表彰台を期待していこう。

それだけのポテンシャルは充分に備わっている、今夏のふたりだ。

文・写真/岩瀬孝文

大会結果

2023年8月19日(土)

サマースキージャンプ2023山形蔵王大会

小林諭果 9位

一戸くる実 4位