CHINTAIスキークラブ「ジャンプ通信」
スキージャーナリスト・岩瀬孝文氏によるスペシャルレポートです。是非ご覧ください。
メンタル面での大きな試練
いつもは、横からの暴風雪に、林が揺れてより寒さに包まれる冬の蔵王シャンツェは、近年、地元有力企業のアリオンテックがネーミングライツを取得。名実ともに山形のジャンプ台となった。それにより、いよいよ運営に力が込められた。
そこには東北地方ならではの暖かみある競技運営と粘り強さがあり、中央からの手助けは無用との無言の迫力さえあった。
「札幌W杯は、緊張していた中で初日の試合でW杯ポイントを取り、ほっとして。さらに選んでもらった2日目は、さらに上を目指して、充分に身体を仕上げてきたのにも関わらず絞り過ぎたためスーツ失格になり、それがもうが悔しくて」
それだけに蔵王では体調を万全にして、きちんと準備をして挑んだ小林諭果(CHINTAI)であった。
「蔵王では、空中で攻め過ぎてしまったのです。しっかりと仕上げて蔵王に入ってきたのですが、ここで失敗ジャンプとは、もう悔しくてたまりません」
飛び出し直後に、追い風に変わるという不運にも見舞われ、よもやの予選落ちを喫していた。
フィニッシュエリアで、しばし呆然として。
「これから国内大会が続きますが、ひとつひとつものにしていきたく思います。身体のケアを施しながら1本1本を大切に飛んでいければ良いと思います」
そして気持ちを切り替えて、つねに表彰台のてっぺんを目指していきたいと語る。
着実に予選を通過して、試合で25位に入ってW杯ポイント獲得した一戸くる実(CHINTAI)
しかし蔵王の最終戦には出られず、その悔しさにまみれてしまう。
「自分の実力が分かりました。ものすごく自信になりましたが、国内でも勝ち切れていない現実に直面して、まだまだ課題があります」
冷静なまま謙虚にそう応える。
「W杯では世界のトップ選手から学ぶことができました。あの地位まで行くには、さらにものすごい努力が必要だと実感しました」
やってやるぞと、目を一瞬キラリと輝かせた。それでつねに勉強の繰り返しであるとも認識。
次なる国際大会はカナダ、バンクーバー五輪シャンツェで行われるジュニア世界選手権。
そこで揉まれて、良い刺激を受けるであろう期待の新星だ。
W杯日本シリーズにおいて、出場した小林選手と一戸選手のふたりにメンタル面での大きな試練が与えられた。
これを乗り越えてこそ、実力派ジャンパーの仲間入りだと言えよう。
文・写真/岩瀬孝文
大会結果
2023年1月13日(金)
FIS 女子ジャンプワールドカップ2023 蔵王大会(W杯第13戦)一戸 25位