CHINTAIスキークラブ「ジャンプ通信」
スキージャーナリスト・岩瀬孝文氏によるスペシャルレポートをお届けいたします!
是非ご覧ください。
向かい風に乗って
早朝には降雪、昼過ぎからは晴天の予報が出ていた札幌市内。
競技役員の尽力が実り、午前10時から公式練習が開始され、11時から1本目開始。
女子の1本目で首位に立ったのは小林諭果(CHINTAI)。ジャンプ後半には下からの風を受けて127mを飛んだ。
「前日からです、みんなに勝つと3連覇だねって。それはもう意識してしまいますよ」
とはいえそれは過度なプレッシャーにはならず、順調に好ましい向かい風に乗っていった。
ところが、2本目に岩佐選手がパワフルな気力あふれるジャンプを見せて140mを記録した。こうなると、飛び過ぎを避けるために、スタートゲートが2段ほど下げられた。そこでラストジャンパーとして飛び出すが、下の風も止んで114.5mに終わり、着地後に小首をかしげた。
「岩佐さんがどれだけの飛距離を飛んだのか、観客の皆さんの声援に消されて、わからないままジャンプしていました。悔しいですねー!」
降雪と強風でキャンセルになった年明けのHBC杯では、公式練習でうなりを上げて風へと突っ込み、そのまま見事に飛距離を伸ばしていって、好調だとの印象にあったのだが、どうにもゲートの変更などアンラッキーな部分もあったかのようだ。
「すぐに切り替えますよ、これはこれです。次の試合ではまた思い切り飛びます」
前を見据えて、そういう意欲を見せた。
ここで負けてはいけない
次週12日(月・祝)は雪印メグミルク杯が開催される。これも得意とする札幌大倉山ラージヒルだ。
悔しいですよと言いながらも、ここで負けてはいけないと気を引き締めた。
さらに2月の最終週から宮の森ノーマルヒル3連戦、雪印カツゲン杯と札幌五輪記念大会が続いていく。そこから3月に入って宮様大会のノーマルヒルとラージヒル。
冬ジャンプシーズンは佳境を迎える。
そのもの、長身でダイナミックなジャンプを見せて、颯爽と表彰台入りを繰り返す笑顔の小林選手の姿が目に浮かんできそうだ。
応援団スタッフから受け取ったマリンブルーのぬいぐるみチンタイガーを、黄色のスキーにベルトで巻き付け、ともに2位表彰台に立ち、左手でそのスキーを天空に差し上げた。
「もう、また、シルバーコレクターなんですよ」
と少しだけ悔しさと無念さをにじませつつ、それはきりっとした姿のチンタイガーが、凛として支えていてくれているようでもあった。
文・写真/岩瀬孝文
大会結果
■2024年2月3日(土) 第35回TVh杯ジャンプ大会
2位 小林諭果