CHINTAIスキークラブ「ジャンプ通信」

スキージャーナリスト・岩瀬孝文氏によるスペシャルレポートをお届けいたします!

是非ご覧ください。

じっくりと地道に

 宮の森シャンツェのサッツを颯爽と切って、聡明な青空に飛び出した。

「ユカのジャンプ、いいんでないかい」

「いい飛びのユカさんですね~」

観戦エリアに立っている、つうなジャンプファン皆さんから、さっと放たれた言葉がそれを物語る。

欧州遠征から帰国したプライベートコーチのヤンネ・バータイネン(元フィンランドチームヘッドコーチ)から優しい口調のアドバイスを受けて、自分で深くそれを考えて、練習に組み入れて飛んでいた。

それが夏秋の間に実を結びつつある。そして札幌宮の森で行われた全日本選手権ノーマルヒルであった。

 「これまでジャンプの本数はたくさん飛べています。それを通して思うのは、シンプルにいいジャンプができれば、おのずと飛距離が出るのだなと、良い自信になってきました。これまでは、どうしてもアプローチで踏み切り(サッツ)のタイミング遅れがあって、それに伴いスキー板が下がって、そればかりを気にしてしまいでした。でも、ヤンネコーチから『まずはアプローチにしっかり乗っていくことが大事だ、これを繰り返しじっくりと地道にやっていこうよ』とアドバイスされて、雪上に立つまで、その基本練習を徹底して行ってきました」

 一週間前に開催されていた全日本選手権ラージヒル大倉山では2本目に逆風を受けて、92.5mと失速して悔しさにまみれた。

「あれはワーストの風でしたね。どうしてとショックでしたが、しょうがありません。それで冬には開幕戦シリーズの名寄から快調に飛ばしていこうとしています。また冬の目標は国内開催のW杯に出場することにターゲットを置いています。雪上ジャンプはもともと得意で、表彰台を目指して少しでもいい位置に昇りたく思います」

向かい風にあたらない不運を少しばかり嘆きながらも、すぐに気持ちを切り替えて、挑む冬ジャンプである。

きたる雪上へ向けてのネクストステージ。

それはパワーの伝達なのかもしれない。しっかりとしたアプローチ姿勢と的確なサッツから、パワーあふれて空中をぐいぐいと飛び進んでいく、その段階へ移行するにあたり、今度はスキーの鋭い滑りとウエイトのかけ方なども問われてくることになる。これらの指導において、世界で百戦錬磨のヤンネコーチの手腕が見事に息づいてきそうだ。

雪の開幕戦は極寒の北海道名寄ピヤシリシャンツェだ。

ここの純白の清らかな深雪を、あでやかに手玉に取って滑りゆく、笑顔あふれる小林諭果選手(CHINTAI)の健やかな表情が浮かんできそうだ。

文・写真/岩瀬孝文


大会結果

■第104回全日本選手権ノーマルヒル 80m 78.5m 166.6ポイント 9位