CHINTAIスキークラブ「ジャンプ通信」
スキージャーナリスト・岩瀬孝文氏によるスペシャルレポートです。是非ご覧ください。
快晴の大倉山で
快晴の大倉山、圧巻の1本目ジャンプはそこから始まった。
サッツを決めて、落ち着いて空中に飛び出し、ゆったりと姿勢を保ちながら、飛距離を伸ばしていく小林諭果(CHINTAI)。
そこに下から吹き上げる風、ひと吹きがあれば、一気にトップに立つ予感があった。
そのとき小林は、いくらかの追い風にあたっていた。
だが、ここからが凄かった。
左右のスキーを少しだけ閉じて、スキーを前方にまっすぐにお押し込みながら、最後のひと伸びを得て125mを記録した。しかも着地ではテレマークも万全。
これは、ものすごい技術である。そして圧倒して首位に立つ。
飛び終えてもしばらく集中力に満ちていた。
「前半の良い風に助けられた印象があります。後半は風が足りなかった、それも強すぎず弱すぎずで。全体的に気持ちよく飛べましたが、もっと飛距離を出したかった」
手応えを得た表情で一気に話をして、さらにこう続けた。
「チームのメンバーが増えて、応援に毎試合きていただき、それはもう感謝しかありません。ひたむきに勝利を重ねて、もっと会社の皆さんに恩返ししたいです」
先のW杯札幌大会と蔵王大会を不十分な結果で終え、その意識を取り除き、大らかにジャンプしたTVh杯だった。
2本目には、力むことなく柔らかくスタートを切り、今度は下からの順風を心地好いまでに掴み122m。完全勝利である。
大会2連覇に軽く微笑み、それから落ち着いてクールに喜びを表現した小林、勝利インタビューを終えて、そこからすぐに国内大会の連戦連勝に向けて気持ちを切り替えたていた。
「空中で大きな失敗をしてしまいました」
いくらか緊張しながら、懸命に飛んでいた一戸くる実(CHINTAI)は1本目のミスを嘆いた。
「風が一番良かったときに、空中でスキーがばらついて、バランスが崩れて。それも126mを超えられる好条件だったのにもかかわらず、それを逃してしまい悔しくてたまりません」
ただ、2本目にかけていこうとすぐに気持ちを切り替えた。
「4位から表彰台を狙って集中して。2本目の切り替えが上手くいきました。勝ちたかったのですが、3位表彰台は良い結果だと思います」
その快活でダイナミックなジャンプは、才能豊かなシルエットでもあった。
試合後にはすぐに空港へと移動、カナダのウィスラーで開催されるジュニア世界選手権へ出場するためだった。
「去年はジュニア世界選手権へ行けなくて悔しかったです。いまは調子が上がりイメージが良いままにあります。ノーマルヒルで自分のできることをしっかりやって、楽に緊張しすぎずジャンプしてきたいです」
ジュニア世界選手権ではバンクーバー五輪シャンツェを使用する。
個人戦における上位入りと、日本チーム4選手による女子団体戦では、全員がW杯に出場していて実力にあふれ、どのように考えてもメダル獲得はできるとの予想があった。
そこで、ともかく思い切り飛ぶことが肝要である。
文・写真/岩瀬孝文
大会結果
2023年1月28日(土)
第34回TVh杯ジャンプ大会
小林諭果 優勝
一戸くる実 3位