CHINTAIスキークラブ「ジャンプ通信」
スキージャーナリスト・岩瀬孝文氏によるスペシャルレポートをお届けいたします!
是非ご覧ください。
内陸の暑さに包まれた塩沢石打スキー場
日の出から真正面に照りつける太陽があった。
新潟の南部、内陸の暑さに包まれた塩沢石打スキー場、その谷間に作られた伝統ある国体記念シャンツェが快晴の試合会場だった。
新潟の子供たちの選手育成に寄与する大会としてエイブルCHINTAIが大きなスポンサーとなる塩沢ジャンプ大会は、その連日の熱さのために、公式トレーニングがキャンセルされ、午前8時30分から1本目が開始された。
K点は80mというやや小ぶりなジャンプ台は、一連の流れにおいてほんの少しのミスでも飛距離に影響してしまう、ここは技術力が試されるテクニカルなジャンプ台であった。
先週土曜日には冬1月に女子Wの開催地となる山形蔵王で4位と、表彰台へあと一歩まで迫った一戸くる実(CHINTAI)は、ていねいに飛び抜けて1本目と2本目ともに3位につけて、その粘りをもって0.5ポイント差で2位表彰台。
「1本目は上手く飛んでいくことができました。優勝した伊藤有希さんと張り合えるようにならなければと思います。ようやくジャンプにまとまりが出てきました。もう少しテレマークを決めることなど、試していきたいこともあって日々の練習を頑張ります」
と、気を引き締めながら2位表彰台からの眺めを、目に刻んだ。それは、いずれは表彰台の中央へとの意気込みのあらわれでもある。
本来であればラージヒルの大きな台で、ダイナミックに飛距離を伸ばしていくことが得意な小林諭果(CHINTAI)は、この小さ目なジャンプ台は、無難にこなしたいところだった。
ところが2本目には直射日光があたるスタートから、静かにアプローチに入り、的確な踏み切りで空中に出て着地も決めた。しかしその直後、ランディングバーンでスキーを外しながら肩で息をして、ついにはフェンス間際で足が止まる。
これは明らかに熱中症の症状であった。
「あまり、よく覚えていないのです。とにかく最後まで頑張ろうとジャンプしました。それに、つねに思い切り飛びたく思います。次の妙高高原は久しぶりの大会でもありますから」
2本目、着地のランディングのあと、やり切った感いっぱいでフェンスの外へと出て、いきなり崩れ落ちた。すぐに救護の人が駆け付けて水分補給と冷却を施して時間を置き、しばらくしてその2~3人と歩いて控室へ戻った。
全力で気持ちを込めて飛んで、ジャンプをまっとうしようとした小林選手は、しっかりと記録を残そうと妙高高原ノーマルヒルさらにはラージヒルの白馬五輪シャンツェに、持ち前の気迫をぶつけていく。
「ひとつひとつの台に合わせていくのも悪くはないのだが、どちらかというと長い目で次から次へとこなしていくことを小林選手には望みたい。筋力はより良いものがついてきているのだから、それは充分に可能だと思います」
一戸監督も、おおらかなままに頑張っていこうと激励する。
国内シリーズはまだまだ続いていく。
その調整とメンタル、集中力などを維持しながら、つねに結果を追い求めるサマージャンプ内地シリーズだ。
文・写真/岩瀬孝文
大会結果
2023年8月27日(日)
エイブルCHINTAIカップ第35回塩沢ジャンプ大会
小林諭果 7位
一戸くる実 2位