CHINTAIスキークラブ「ジャンプ通信」
スキージャーナリスト・岩瀬孝文氏によるスペシャルレポートです。是非ご覧ください。
合宿を重ねてきたことから
いつもおおらかにダイナミックなジャンプを見せて表彰台に立つ小林選手は、逆に小さめなジャンプ台を苦手としていた。
それが今回、欧州サマーグランプリ大会の後半戦に出場、その移動各所でトレーニング合宿を重ねてきたことから、得意とするラージヒルのみならず、やや苦手なノーマルヒルまでも充分にこなせるようになっていた。
「あのプラニツァの台は良い練習になりました。男子のW杯で弟の陵侑がぶっ飛んでいくフライング台を見て大きい印象があって、そこに並ぶラージヒルとノーマルヒルではそんなにフライトが高くならず難しさも抱いて。でも、ここでもう少し練習を重ねると大丈夫だろうという手応えは得ました。その点、サマーグランプリの最終戦クリンゲンタール(ドイツ)はフライトが高くて楽しく飛べました。そこでは予選40番そして試合で16位でした。シングル順位に入れたらもっと良かったのですが」
W杯ジャンプ男子最終戦シリーズのフライング台で有名なプラニツァ(スロベニア)は2023年2月開催の世界選手権大会の会場であった。そこで入念に調整を続けた小林選手はひとしきり好ましい手応えを得ていた。
またジャンプスーツなどのマテリアルの部分で手直しできる部分もあり、そういう工夫も必要であると感じていた。そうこうして海外転戦と合宿生活そして長距離移動に慣れ、自信を持って次の試合へ進むことが可能となった。
秋田鹿角で初めての表彰台
「秋田鹿角のこの大会で初めての表彰台が優勝というのはほんとうに嬉しいです。昨日の公式トレーニングから毎回いい風をもらえて気持ちよく飛べていたので、これは持っているかもと(笑)それに日本に帰ってきて安心したこともあります。一戸コーチとは蔵王大会ぶりにジャンプを見てもらって、いろいろと手直しができました」
ヨーロッパの遠征から帰国後すぐに秋田へと直行、強行出場した鹿角サマージャンプ大会。昨年はどうにもよいジャンプができないまま、表彰台を逃がしていた。それが悔しくてたまらず、自分としては細かな技術力が試されるノーマルヒルやミディアムヒルの台もしっかりと飛び抜けていきたく思っていた。
「一連の流れが良くて力まずに飛べて、大きなタイミング遅れや、スキーの下がりはありませんでした」
その感覚はけっして悪くなかった。ジャンプ後にはブレーキングトラックで安堵感に包まれた。
この鹿角シャンツェでは1本目に最長不倒の78mを記録、より集中を高めた2本目76.5mと2本ともに首位に立つ完全勝利を遂げた。
しかも公式練習(トライアル)から空中スピードにあふれた抜群のジャンプを見せ、1本目では着地でていねいにテレマークを決める会心のジャンプだった。
「大切な白馬の全日本選手権まで2週間くらいあります。遠征の移動などでなかなか手掛けられなかった筋力トレーニングを入念に行いながら、調整を続けていきたく思います」
この全日本選手権の成績次第で、冬の女子W杯代表メンバーがほぼ決定となる。
その大一番を控えて、なんとしても日本チームの代表入りをと気持ちを込めていた。
文・写真/岩瀬孝文
大会結果
2022年10月8日(土)
2022年鹿角サマージャンプ大会 優勝