CHINTAIスキークラブ「ジャンプ通信」

スキージャーナリスト・岩瀬孝文氏によるスペシャルレポートをお届けいたします!

是非ご覧ください。

いい風がくるときを信じて

白馬の風は乱暴である。

正面から良い風が吹いて、飛距離を伸ばしていく選手と、いきなり風が変わり横からの突風にあたる選手、そして無風になり待たされる選手まで様々になる。

長野五輪シャンツェでは、昔から風に対する我慢が必要なのである。

しかも中腹の南側を見ると風除けのネットが壊れ、横風は吹き抜けの状態になっていた。

18日(金)にノーマルヒルで5位と健闘した一戸くる実(CHINTAI)は、1本目に向かい風に乗って、いつもの右寄りの着地になりながら勢いあるジャンプを見せた。そのまま表彰台入りを狙うことができたが、続く2本目には飛び出して下からの風が少なく飛距離にあとひとつの伸びが見られず無難な飛距離に落ち着いた。

「風だけのせいにするのはいけませんが、確かに空中で風がきていないと思い、粘ったのですが…。でも、試合ではこういうことはよくあるので、けっして悲観してはいません。それはそれですから、いい風がくるときを信じて飛んでいます」

表彰台を逃がした無念の表情ながら、すぐにポジティブな感覚を取り戻し、翌20日(日)に行われるラージヒルに向けてしっかりと気持ちを切り替えた。

「それでも女子W杯の開幕メンバーに選ばれたので嬉しいです。そのあとも継続して代表メンバーに残ることができるように、ひたむきに頑張ります」

そう、噛み締めるように力強く応えてくれた。



プラスの方向へ

ひとり濃い色のスウエットのフードを深くかぶり、静かにリフトに乗ってきた小林諭果(CHINTAI)だった。

それはまるで元気がないオーラに包まれているようでもあり、挨拶以外の余計な声などはまったくかけられない雰囲気にあった。

今月5日にあった秋田鹿角の試合では、良い順風を受け、それこそ健やかに飛距離を伸ばして4位に入り、そこから迎えた全日本選手権白馬大会。

曇天の白馬ノーマルヒルは風が弱く、たまに無風にもなっていた。なかでも止まっていた風の公式練習、気迫で空中に飛び出したものの、少しだけ「あー」と声を出しながら着地したジャンプがあった。

ノーマルヒルでは22位に終わり、冷え込んできた20日の白馬ラージヒルに挑んでみたが、風とうまくかみ合わず70m中盤を2本飛んで27位に沈んだ。

もともと長身を利したロングジャンプの技術を持ち合わせているだけに、どうにも突き抜けない結果となった。

そうであれば、もうこの時期は冬の雪上アプローチのジャンプを見据えた感覚に移行して、練習を積み重ねる、そのあたりのバランスを考えた調整に入っていくのが賢明なのか。

何もここで下を向く必要はない。いま手掛けていることの延長線上で、時間をかけてひとつひとつクリアにしていけばプラスの方向へと進んでいける。

通常ならば軽く100m超えを2本揃えてひとけた入りなのであろう。そのどこに標準を置くか試行錯誤となるが、サマージャンプのラストを飾る今週土日の札幌大倉山で、いつもの思い切りの良さを見せてほしい。

次のラストサマーゲームは大倉山ラージヒル2連戦。

なんやら札幌はもう雪虫が舞うようでもあり、これで約ひと月後には冬シーズンが始まり、道北の名寄ピヤシリで開幕2試合となる。

◇W杯開幕戦シリーズ女子日本代表
伊藤有希(土屋ホーム)
髙梨沙羅(クラレ)
丸山希(北野建設SC)
勢藤優花(オカモトグループ)
一戸くる実(CHINTAIスキークラブ)
岩佐明香(大林組)

文・写真/岩瀬孝文


大会結果

■2024年10月18日(金)  第103回全日本スキー選手権大会ジャンプ競技・種目ノーマルヒル 兼 第20回NBS杯スペシャルジャンプ白馬大会

  5位 一戸くる実

  22位 小林諭果

2024年10月20日(日)  第103回全日本スキー選手権大会ジャンプ競技・種目ラージヒル 兼 第20回SBC杯スペシャルジャンプ白馬大会

  7位 一戸くる実

  27位 小林諭果