FISジャンプワールドカップ女子蔵王大会第2戦

2019年1月20日
クラレ蔵王シャンツェ

選手たちへ大きな声援を送るエイブル応援団(2019年1月20日)

今日も蔵王は寒かった。

カメラを持つ手はどんどん冷えて、
しまいには指先に痛みが増してくる。

であれば懸命に応援してくれる観客や
応援団の皆さんもきっと寒いに違いない。

そうとはいえ、
心を込めてめいっぱい応援する声が
ジャンプ台の上段まで響いてきていた。
大声援を受ける日本選手は最高だろうな、
これでどこまでも飛べるだろうなと思った。

ところが、である。

今シーズン、世界の女子ジャンプの潮流が
大きく変わり始めていた。

 

あの強者ルンビ(ノルウェー)と
W杯で個人総合首位のイエロービブを守る
アルトハウス(ドイツ)という海外トップ2は、
あくまで強かった。

いや、強すぎた。

蔵王温泉スキー場ならではの猛烈な霧にまみれた
シャンツェはアプローチから飛び出してもう、
その先が見えない状況にあった。

選手たちは、持ち前の感覚を研ぎ澄ませて
懸命に着地を決めていく。

そんなW杯女子ジャンプ選手のレベルの高さに
観客は、ひとしきりうなった。

視界不良の中で試合が行われた(2019年1月20日高梨選手飛型)

視界不良ながら、しっかりと成立した
ナイトゲームの蔵王W杯3試合目だった。

ところが優勝が期待された、
準備万端なエース高梨沙羅(クラレ)が
6位と敗れてしまう、
そんな波乱が待ち受けていた。

「やはりアプローチの姿勢が大切です。
 それさえ決まってくれば、
 ジャンプが安定して思い描くものが
 できあがってきます」

高梨は、理想のスタンスをつかみかけているのだが。

しかも頼みの伊藤有希(土屋ホーム)までもが
11位に後退、なんということだ。

そのなかで2本目に進み、
そこで健闘のジャンプを見せて30位と、
またしても着実にW杯ポイントを獲得したのが
茂野美咲(CHINTAI)だった。

この日30位でポイントを獲得した茂野(2019年1月20日)

「ぎりぎりでしたね。
 視界はとてもやばかったですけど、
 今日も伸び伸びと飛べたような気がしています。
 どうしてもW杯ポイントを取るんだという
 目標を達成できました」

山形市内の選手宿舎に戻る大型バスの中で
深く座席に腰をかけ、携帯電話の激励メイルに
目をやりながら、ふうと、一息をついた。

「相変わらず踏み切りのタイミングが良くないのと、
 空中でのスキー板の下がり具合に、
 ジャンプ全体の流れがまったくで、
 だから飛距離が伸びないんです。
 自分が飛んだビデオを懸命に見直して
 余計にそう思いました。
 まだまだです、がんばります」

いつまでも前の失敗を引きずっても
何もいいことはない。

切り替えを早くして、次への抱負を述べた
小林諭果(CHINTAI)である。

この日も試合を盛り上げたエイブル応援団は、
選手たちの幟をていねいにたたみ、
速やかに撤収作業に入った。

そして入場のときにファンの皆さんに配っていた
青緑の応援フラッグと子供たちに大人気の
チンタイガーともに、静かに宿舎へと帰っていった。

この日も会場で選手に大きな声援を送ったエイブル応援団(2019年1月20日)

 

日本女子のチーム力向上のためには、
この経験豊富なふたりの努力が
とても大事に思えてならない。

それこそが海外列強勢に打ち勝つ第一歩である。

(文/写真 岩瀬孝文)