CHINTAIスキークラブ「ジャンプ通信」

スキージャーナリスト・岩瀬孝文氏によるスペシャルレポートです。是非ご覧ください。

 春を迎える大倉山

昼間の暖かさから夕刻には冷えて、ほどよく雪が締まってきた札幌大倉山だった。

上位各選手が飛び終え、1本目首位の最終ジャンパー岩佐明香(大林組)を見上げ、待っていた。

 「6連勝おめでとう!」

周囲に響き渡る声をあげた小林諭果(CHINTAI)が、この試合で優勝を決めて、しかも、シーズン後半戦に6連勝を記録した岩佐選手を讃えた。

「この直前に宮の森のノーマルヒルでトレーニングしていたことを、ラージヒルへ繋げられるように努力しました。でも、向かい風をもらったにもかかわらず、その風を生かせずに、とても悔しく思います。また着地をしっかり決められなかったのも課題です」

冷静に、理路整然と分析して、すぐに次へ生かそうとした。

フィニッシュゾーンから2本目を観ると、ジャンプ後半において、安定して100mあたりから下へ伸びていき、テレマークを入れてきれいに着地したのがよくわかるが、あえて完璧ではないと自身に厳しく表現した。

 春を迎える大倉山は、ひとときランディング右側の雪が解け、下地にしいてある緑色の人工芝が見えたが、そこは熟練のピステン部隊があたりの雪をきれいに集めて固いランディングバーンに仕上げてくれた。今季のラストゲームも無事に行われた。

 「上半身を使いすぎ、踏み切りを出てすぐにスキーの先が下がってしまって。それを直していくと、もっと飛距離が出せると、一戸剛コーチに言われています。このことをしっかりと頭に入れて飛び出していますが、なかなか上手くいかなくて、これも課題のひとつですね」

今季最終戦の1本目は、空中においてスキーの軌道を修正するシーンが見られた。ただ、風もそこまで良くはなく飛距離を伸ばしたいがためか、幾分、表情に力がこもった。

試合後には、ナイトゲームに映える大好きな大倉山ラージヒルシャンツェと、今シーズンで引退する数名の選手、それを見送るファンの皆さんをそっとみつめつつ、そこに新たな目標が芽生えてきた。

「次のシーズンは世界選手権とオリンピックもないですから、目標はそうですね、W杯を回れるようになること。そのためにも、シーズンオフには的確に身体を絞り込んでいこうと思っています」

海外に通用する長身ジャンパーの小林選手だ。

ラージヒルで良い風を受けて大らかに高くフライトして、伸びていくシーンは圧巻だ!

 これからしばらくの間シーズンの疲れを癒し、全身をリフレッシュさせる。

またゴールデンウイークあたりから、ひたむきなままにランニング、そして、ていねいな筋トレなどで心身をじっくりと作り上げていく。

それはハードな中にも、いくらかでも楽しみながらが、好ましくもある。

ほっとしつつ、小林選手はすでに来シーズンへ挑もうとする心意気にあふれていた。

文・写真/岩瀬孝文

大会結果

2023年3月18日(土)

第24回伊藤杯シーズンファイナル大倉山ナイタージャンプ大会

小林諭果 2位