CHINTAIスキークラブ「ジャンプ通信」

スキージャーナリスト・岩瀬孝文氏によるスペシャルレポートをお届けいたします!

是非ご覧ください。

落ち着いて飛ぼうと

意気揚々とフランスへサマーグランプリジャンプ大会の遠征に出た一戸くる実(CHINTAI)だったが、やはり緊張の色は隠せなかった。

気温の急激な変化や乱れまくる風などで荒れたゲームとなった欧州ジャンプ週間開幕戦のフランス・クーシュベル大会だった。

しかも風雨に見舞われた、せり上がりのランディングバーンが崩落したポーランドのビスワ大会は、復旧工事のため延期となった。

そのクーシュベルの開幕2試合を飛んですぐさま帰国して、新潟県南魚沼市石打丸山シャンツフェで開催されたエイブルCHINTAI杯で、力強いジャンプを見せて3位表彰台に立っていた。

「今日は、落ち着いて飛ぼうとしていました。バランス良い踏み切りと安定した空中姿勢を意識しながらです。いつも飛距離を出そうと焦り気味に飛んでいたようでもあり。それで、次のサマーグランプリで、また海外遠征メンバーに選んでもらえて、うれしいです。国内の白馬と妙高の残り3試合でしっかりと仕上げて、ヨーロッパで海外強豪選手の良い部分を見て学んでこようと思います」

現時点における自分のウィークポイントを理解して、それを修正することができた一戸選手。懸念されたやや右方向に流れていくジャンプは、身体のバランスを考えながらまっすぐ飛んでいけるようになった。

「これまでのウエイトトレーニンが成功して、アプローチでスピードが出るようになりました。下半身に負荷をかけることに主眼を置いたのです。いまは日本のトップクラスにいる選手達に追いつくことが目標になっています」

一戸コーチは日々のトレーニングの手応えを感じていた。

ひたむきに

 いまひとつ調子が上がらないような状態にあった小林諭果(CHINTA)は早大スキー部時代からの一戸コーチと、フィットネストレーナーと相談しながらジャンプを作り直していた。これには、ひと夏くらい時間をかけての組み直しともいえた。

「現在の小林選手のことで気になるのは筋力をつけて、それを維持していくこと。本人も、それを理解していて夏場はじっくりと筋パワーをつけていこうとしています。もちろん徐々に良くなっています。これによりアプローチ、踏み切り、空中姿勢、着地に至るまで長い目で、的確なアドバイスを続けていこうとしています」

腰を据えた長期スパンで指導する一戸コーチだ。

蔵王サマージャンプ大会では正面からの良風に乗って7位に入り少しだけ笑顔になれたが、塩沢石打のジャンプでは、静かなジャンプとなって10位台になってしまった。

「力みと、空中でスキー板の先端の下がりが出て、そのあたりを修正していきたく思います。今日はまだ力不足だったかなとも感じています。すべてのパワーや空中姿勢など、流れは良くなってきているのでひたむきにやってききます」

務めて冷静にジャンプを振り返る小林選手。

今後の工夫を施したトレーニングにより、再度、ラージヒルでダイナミックに伸びていく、勢いにあふれたジャンプが観られる。



『ワークアウト教室』

ふたりともに塩沢試合後のエイブルCHINTAIカップ『ワークアウト』イベントでは、マイクを握りながら、わかりやすい説明で、立ち上がりの動作や股関節の柔軟性、シミュレーションジャンプにおけるボディバランスなどを実践して見せた。

そういうジュニア選手への指導から自分へフィードバックできるもの、あるいはひらめきを得て、これらが次の試合や普段の地道なトレーニングへ活かされてきそうだ。

ワークアウト教室に参加したこども達と一戸コーチ、小林選手、一戸選手、チンタイガー

文・写真/岩瀬孝文


大会結果

■2024年8月13日(火) FIS スキージャンプ サマーグランプリ 2024 第1戦 クーシュベル大会

  17位 一戸くる実

■2024年8月14日(水) FIS スキージャンプ サマーグランプリ 2024 第2戦 クーシュベル大会

  20位 一戸くる実

■2024年8月17日(土) サマースキージャンプ2024山形蔵王大会 

  7位 小林諭果

■2024年8月25日(日) エイブルCHINTAIカップ 第36回塩沢ジャンプ大会 

  3位 一戸くる実

  13位 小林諭果