CHINTAIスキークラブ「ジャンプ通信」

スキージャーナリスト・岩瀬孝文氏によるスペシャルレポートをお届けいたします!

是非ご覧ください。

W杯へ向けて

新年2025年の幕開けは1月13日のHBC杯、札幌大倉山ラージヒルである。

午前中は微風、2本目の午後にはやや荒れ気味の風となったが、ジャンプ台からは札幌市内の眺望が良く、この土日に開催される女子W杯札幌大会を待ってもいた。

雪上の滑りについては、これまでの長年の経験がものをいう、と言わんばかりに勢いよく空中に飛び出していった小林諭果(CHINTAI)は、2本目の巻いた風の中でも強い気持ちで飛距離を伸ばした。結果はひとけた入りの9位。

これはW杯代表組に次ぐ成績で、今週末に行われる札幌W杯へ良好な流れにあった。

逆風が好き

W杯遠征から帰国したばかりの一戸くる実(CHINTAI)は、欧州移動と転戦の疲労と時差ぼけの状態にあったが、W杯代表らしいローゲート(スタートゲートが低く抑えられて助走距離が短くなる)の設定に対しても、どこ吹く風で1本目3位につけた。ただ2本目にはバランスが崩れてトータルで8位となった。

「後ろの風の方が強いんです。これまで飛んでみたジャンプ台ではエンゲルベルク(スイス)の逆風が好きで、そこでもスキーを立て気味に進められます。また、海外選手の誰かに勝つということよりは、シンプルに世界のトップ10入りをめざしています。昨シーズンまでは何とか2本目に残るということが目標でしたが、今季のW杯15位入りがあり、ようやく上位が見えるポジションまでにきたと思っています」

踏み切りでバックからの風というと、風に押されて落とされて行くイメージがある。ところがその逆境にあえて好きなんですと挑み、飛距離を伸ばしていく。これは2026ミラノコルティナ五輪で使うバルディフィエンメ(イタリア)のジャンプ台も強烈なバック風の台として有名で、そこに対応ができてくるということだ。なかなか先が楽しみである。

「スキーは以前より3㎝短くしています。スキーの操作性を重視して、なのですね。今日は風が荒れ模様になりましたが、ユカさんは気持ちが入ったジャンプをみせて、くる実はいつもの左へ流れていくジャンプでありながら、おのおの手応えを感じていたようです」

試合後にはジャンプスキーの滑走面の溝に残る水分を指でなぞり、滑りとワックスの状態などを細かにチェックしていた一戸剛コーチだった。

ともに札幌W杯のローゲートになる予選で、思い切りよく飛び、飛距離を伸ばしてW杯の本選へと進んでいきたい。

文・写真/岩瀬孝文


大会結果

■2025年1月13日(月)  第67回HBCカップジャンプ競技会

  8位 一戸くる実 [1本目109m(28番ゲート) 2本目107.5m(30番ゲート)]

  9位 小林諭果  [1本目109m(32番ゲート) 2本目113.5m(32番ゲート)]