CHINTAIスキークラブ「ジャンプ通信」

スキージャーナリスト・岩瀬孝文氏によるスペシャルレポートをお届けいたします!

是非ご覧ください。

氷点下の大会

いつもながらの寒さに見舞われた北海道名寄市、降雪と吹雪そして想像した通りの冷え込みですぐに-10℃超えになる。夕刻に歩くと、雪がきゅっきゅっと乾いた音色であたりに鳴り響いた。

そんな寒さの中での試合、選手たちは唇を噛み締め、気持ちを入れてシングルリフトで、スタート台へと昇っていった。

待ち遠しい雪がふんだんにある。

ふと、淡々と上がるオレンジピンクのヤッケが目に入ってきた。それは遠目にも冷静な表情の小林諭果選手(CHINTAI)であった。

 「今日は、昨日より体が動いていました。トライアルも好ましい飛距離で。でも、やはりタイミングの遅れがあるのです。踏み切り(サッツ)で早め、早めにと思い、力んでしまって。つねにシンプルに立つ(飛び出す)という強い気持ちがあって、それが延々とした課題なのでしょうね……。この名寄に来る前にはスロベニアのプラニツァで、今シーズン初めて雪上を飛びました。ところが、ものすごくナーバスになってしまって。実際には、あまり得意ではない台だったように感じました。そのため、まずは雪に慣れるチャンスと捉えて、飛んでいたのです」

土曜日の名寄ピアシリ杯は9位で表彰式に並んだ。その1本目は勢いあるジャンプを見せてくれた。
連戦となった翌日の吉田杯では、ほぼ無風の中で飛距離が伸びずに12位タイの順位に終わったユカ選手だ。

「この後は名寄で居残りの練習を続け、19日に北海道選手権があって、それまでジャンプトレーニングと陸トレを中心になんです。もちろん、早く札幌大倉山ラージヒルを飛びたいですね」

呼吸を整えながら気を引き締めて、フィニッシュハウスの廊下で、そのようにこれからの意欲を口にした。

伊藤謙司郎コーチ

国内では、フィンランド人のヤンネ・バータイネンコーチが欧州遠征に出かけている期間は、元五輪代表の伊藤謙司郎さんがコーチボックスで旗を振る。

「この時期は海外へ出ているヤンネコーチの代理としてジャンプ指導をしています。小林選手の場合は、アプローチのポジションにおいて、ひとつの癖なのかなと思うのですが、いつも、テイクオフを頑張りすぎるような印象があります。その余計に頑張ることを少しだけ抑えていくことが大切に思います。これは練習ではできてはきていますから、気持ちとタイミングが合えばいいだけ。その入れ込み過ぎがないように、です。もともとラージヒルの大きな台が得意で、ある程度スピードが速い状況で、良いジャンプができていますから。いまは、本人は納得できていないのかもしれませんが、この流れを素直に継続させていけば、全然問題はないと思うのです」

極寒の名寄シリーズで、伊藤コーチが明言した。

「ですから、このままでいいんでないでしょうか。これから先も、シンプルにこのように飛んでいくと、良い結果が生まれてくるように思います」

最後に、その一言をしっかりと付け加えてくれた。

そのとおり、1月の札幌大倉山ラージヒルの強い正面からの風を受けた飛翔こそが、ユカ選手の本領発揮となる。落ち着いて自然体で軽やかにジャンプする。

年明けの楽しみは、そこにたくさんある。

文・写真/岩瀬孝文

大会結果

■第56回名寄ピアシリジャンプ大会    81.5m 74.5m 162.5ポイント 9位
 兼 第63回北海道新聞社杯ジャンプ大会
■第41回吉田杯ジャンプ大会       76.5m 73.5m 148.0ポイント 12位