CHINTAIスキークラブ「ジャンプ通信」
スキージャーナリスト・岩瀬孝文氏によるスペシャルレポートをお届けいたします!
是非ご覧ください。
アイストラックの戦い
五輪前のサマージャンプシーズンが終わろうとしている。
夏場は北海道と本州のジャンプ台でタフなジャンプで、しのぎを削り合い、しっかりとした成績を残すことが大切になる。
ところが、ここにおおきな曲者が控える。それは夏のレールトラックに慣れ親しみ、良い飛距離を得ていた選手が、時としてスランプに陥るからだ。
つまり、アプローチのレールがきれいで、すんなりとスピードが出てくれる夏場のジャンプ台はあくまで小手調べ。冬のアイストラックを使う秋のジャンプと、降雪後のジャンプになると、その滑りに狂いが生じたりする。そこにひとつの落とし穴があるのだ。
サマーグランプリで好成績を残した選手が、冬にいきなり飛距離が伸びにくくなるのは、そのためで、必ずしも夏のチャンピオンは冬にも王道を突き進むとはならないのである。

アプローチ姿勢とウエイトの配分をていねいに作り直していた小林諭果(CINNTAI)は、札幌大倉山の全日本選手権ラージヒルで、公式トレーニングを颯爽と飛び抜け、1本目には111mで13位の記録を残した。
そこまでは良かったが、集中した2本目にはなんと追い風に見舞われ、失速して92.5m。
悔しさにまみれた。

『力まずに、自然体でサッツを飛び出して、進む。その次の段階までやってきた。すぐに雪が降り始める。そうだね、いろいろと楽しみだね』
ユカ選手のジャンプを心に余裕を持って観ていた個人コーチのヤンネ・バータイネンだ。そのコーチボックスからていねいに旗を振り、また逆側のジャッジタワー屋上に構えた茂野プリンシパルさんがアプローチから着地までビデオ撮影していた。
気持ちを落ち着けて、試合の撮影ビデオを見ながら、チェックポイントを脳裏に描く。そこに、柔らかい言葉で『こうしてやってみよう』とアドバイスを入れるヤンネコーチ。
冬はもうすぐそこ。
雪前の最後の仕上げに、札幌宮の森で行われる全日本選手権ノーマルヒルで闊達のジャンプを見せたいものだ。
文・写真/岩瀬孝文
大会結果
■第104回全日本選手権ラージヒル 111m 92.5m 137.6ポイント 12位




