2018年9月2日(日)
第18回妙高サマージャンプ大会

『秋から冬に思いを馳せて』

 

きれいに晴れ渡る天気ではあったが、
台風の影響による安定しにくい風により、
公式練習は中止、いきなりの1本目となった。
女子は帰国している高梨沙羅(クラレ)を始め、
中学生を含む38名のエントリーとなった。

 

「追い風の条件だと思って、
今日はていねいに飛ぶことを
心掛けました。
白馬合宿では10本と少し、
よく考えながらジャンプすることが
できていました」(茂野)

 

この日8位だった茂野美咲選手

 

地元の塩沢ジャンプ大会における3位表彰台で、
この夏、まずまずの手応えを得ていた
茂野美咲(CHINTAI)、
心の中は9月4日からの海外遠征、
サマーグランプリ出場にあった。

 

遠征直前の妙高高原では荒れる風の中、
その調整として実直なジャンプをみせた。
すでにチャイコフスキー(ロシア)の
ラージヒル台の攻略が頭の中を駆け巡る。
「このチャンスをものにしたいです。
絶好調にあるので、
早く現地で飛びたいです」(茂野)

 

と胸を張って楽しみを語る。

 

笑顔を見せる茂野美咲選手

 

「なかなかいい感じですよ。
白馬の合宿も成功していましたから」(小川コーチ)

茂野の指導が長く、目を細めるライズJCの小川孝博コーチだ。

塩沢と妙高高原の試合の間には、
白馬のラージヒルを使用したトレーニング合宿を行ない、
そこでじっくりと仕上げてきた茂野である。

 

 

なんとはなしに、しっくりとこない
8月後半と9月あたまにかけての
小林諭果(CHINTAI)だった。

新潟の両大会ともに思うような飛距離を出せずに、
ふさぐ気持ちで眼差しも厳しくなるが、
そこは頑張って言葉を残してくれた。

 

「いま、ジャンプがわからなくなってきました。
迷いがあります。
タイミングの遅れとか、
いろいろとありすぎて。
いま、一度、基本に立ち返ることが
大事に思います」(小林)

 

じっくりと言葉を選びながら、そう言った。

「塩沢大会のあとは、東京に帰って
仕事と陸上トレーニングに集中してきました。
そこからですね」(小林)

 

このような状況で、
あまり多くを語りたがらない気持ちもよくわかる。

妙高の試合後には早大スキー部の後輩、
大井栞(札幌日大高→早大)と立ち話をしながら、
自分のジャンプを振り返っていた。

 

小林諭果選手(2018年9月2日妙高)

 

ただ、いまこれだと決め込むことはない。
それというのも、夏場のアプローチと、
冬に雪上やアイストラックのアプローチの滑りとは
その性質がまったく違ってくるからだ。

その夏のアプローチの滑りに慣れ過ぎてしまうと、
冬に迷いが生じるのはよくありがちなこと。
それはどの選手も周知の事実。

まずは、焦らずじっくりと、
自分の持ち味を出しながらである

 

カメラに向かって笑顔をみせる小林諭果選手

 

「去年の夏よりはあらゆる面で
良くなってきています。
あまり心配はないです。
とにかく、いまは伸び伸びと
飛ぼうと言っています」(一戸コーチ)

 

早大スキー部監督で小林を指導にあたる
一戸剛コーチはそうアドバイスする。

 

先にチャンスがある、岩手八幡平の
名門ジャンプ一家の長女小林諭果だ。
白馬サマーグランプリで2連勝した
弟の小林陵侑(土屋ホーム)、
優勝候補ながら残念なことに今回は
スーツ違反で失格となった兄の
小林潤志郎(雪印メグミルク)が躍動する。

さらにとき同じく妙高大会に出場していた
末弟の小林龍尚(盛岡中央高)も、
いくらか心配そうに姉さんの
ジャンプを見つめていた。

 

「自分では新しいテクニックを
身につけている最中です。
それはジャンプ後半にスキーと
身体を離していくタイプ。
兄の陵侑もこれで、
サマーグランプリで優勝しました。
姉ちゃんもこれをアレンジ
できないわけはない」(小林龍尚)

 

ジャンプ台の下、
選手控室の前に出てきて、
そうエールを送る。
やはりそこに焦りは必要ない、
雪のある冬に向けてじっくりと
一歩ずつなのである。

 

 

 

高梨沙羅は、慣れ親しむ新潟で
落ち着きにあふれていた。

 

「技術を確認しながら、
いまはていねいに飛んでいます」(高梨)

 

優勝した高梨沙羅選手

 

他選手を圧倒する最長不倒95mを記録して
完勝を遂げた妙高高原大会。

 

 

注目の若手選手では
社会人1年目の御家瀬恋(イトイ産業)は
大ベテランの菅原清一郎監督
(イトイ産業スキー部)が
つねに温かい目を持って育成にあたる。
そこにインターハイの覇者で伸びしろのある
鴨田鮎華(下川商)が続いている。

 

学生では海外遠征メンバーに選出された
五十嵐彩佳(札幌大)と丸山希(明大)、
注目の大型選手の岩佐明香(日大)など、
女子選手に個性派が揃ってきた。
そこに鋭く食い込んでいくのが
2011オスロ世界選手権代表の茂野美咲と、
長身ロングジャンパーの小林諭果だった。

 

 

 

●妙高サマージャンプ大会

1.高梨沙羅(クラレ)
2.伊藤有希(土屋ホーム)
3.岩渕香里(北野建設)
8.茂野美咲(CHINTAI)
20.小林諭果(CHINTAI)

 

 

▽CHINTAIスキークラブ結果報告
第18回妙高サマージャンプ大会結果報告(2018年9月2日)

▽第18回妙高サマージャンプ大会
公式リザルト