CHINTAIスキークラブ「ジャンプ通信」

スキージャーナリスト・岩瀬孝文氏によるスペシャルレポートです。是非ご覧ください。

スキージャンプに転倒はつきものだった。

スキージャンプに転倒はつきものだった。

秋の鹿角ノーマルヒルを制した小林諭果(CHINTAI)は、記念すべき優勝盾を胸に意気揚々と白馬の宿舎へ入り、全日本選手権2試合に向けて調整を施していた。

その戦略として、あまり得意としないノーマルヒルでなるべく上位につけて、飛距離を伸ばせる大好きなラージヒルで一気に表彰台へと、狙いを定めていた。

それがノーマルヒルでよもやの1本目転倒で減点となり26位、2本目にはジャンプアップを果たしたが16位に終わっていた。

「飛ぶのが怖かったんです。着地もテレマークを決められずにいて…」

そのスタート前に過度な重圧がかかっていたのが分かり得た。

今回の白馬全日本選手権で表彰台に昇れば、欧州サマーグランプリのポイントを保持しているだけに日本女子代表入りの可能性が高い。そうなると果敢に挑戦するのが確かな道。

ただ緊張の度合いも異常なまでに増し、勝つか負けるかは自分自身との闘いになるのだ。

ノーマルヒルでは着地で右足が流れて転倒、それが大きくあとを引く格好となった。

「身体全体に痛みがあり怖くなったのです。それにラージヒルは試技なしでいきなりの1本目で、あれこれと考える時間もなくて」

良い風はなかったが無難に飛び抜け、2本目に上位を視野における順位に入ったと思いきや

転倒して、人工芝を流される濁音があたりに響いた。しばらく起き上がれずに、うなだれたまま、歩き出して「あーっと」悔しさの声をあげるが、それが白馬の谷間にむなしく響く。

圧巻の飛距離を記録

ロングジャンプをと願いを込めた2本目には123.5mと伸ばして、安全に両足ダブルで着地。そこにテレマークは入らず、しかし圧巻の飛距離を記録した。

ランディングバーンからスキーを止めたフィニッシュエリアでいきなり泣き崩れて、よほどのプレッシャーだったのだろう。そこに引退していまはセカンドキャリアを歩む茂野美咲に良く飛んだね、すごかったよと声をかけられて再び号泣。

そこから言葉をもらおうにも、長い時間はかけられず、すっと去っていった。結果はこれも転倒が影響しての7位。机上で言えば2本目のジャンプと同様な感覚で1本目を飛んでいれば、なかなかの勝負になったはずだ。

最終的には好敵手となった宮嶋林湖(松本大)に先行を許した成績に終わった。

今後のチャンスは1月のW杯札幌大会2試合と蔵王大会2試合での上位入賞、そしてポイント獲得、そこに激しく想いをぶつけていく。

「そうですね、しばらく心を落ち着けて、札幌市内のコンディさんに行って身体のメンテナンスをしてもらいたいです」

このコンディは兄の潤志郎選手が身体の調整に通う信頼あるボディトレーニング施設で、ジャンプ選手のトレーニングメニューをたくさん作り上げてきた吉泉さんがオーナー、しかも奥さまは女子ジャンプで名選手だった葛西賀子さんだ。

さらに効果的な筋力トレーニングを加えて、心身ともに鍛え上げて挑む、次週土日の大倉山ラージヒル2連戦である。

いまの悔しさあふれる気持ちを、そこで思い切りぶつけていきたい。

文・写真/岩瀬孝文

大会結果

2022年10月21日(金)

第101回全日本スキー選手権大会 ノーマルヒル競技 16位

2022年10月23日(日) 

第101回全日本スキー選手権大会 ラージヒル競技 7位