CHINTAIスキークラブ「ジャンプ通信」
スキージャーナリスト・岩瀬孝文氏によるスペシャルレポートです。是非ご覧ください。
繊細なジャンプ技術が必要
もともと小林諭果選手(CHINTAI)が得意としていたのはラージヒルだ。
その大きな台で好ましい向かい風を受けて大きく飛び抜けてみたいと、サッツ(踏み切り)を飛び出していった。
ところが蔵王ノーマルヒル、ましてや塩沢ミディアムヒルともなれば、小ぶりなジャンプ台で、少しのミスも許されない繊細なジャンプ技術が必要だった。
長身ジャンパーで欧州タイプと言われる小林は、それこそ欧州のノルウェー選手のようなおおらかさで、はるか遠くまで飛んでいくスタイルを有していた。
帰国後すぐの時差ぼけが抜けきらないままに、ジャンプした蔵王では4位であった。
「雨で霧が下りてきた蔵王も、風を気にすることなく飛距離を伸ばせました。また塩沢は、早朝から雨だったので、あえて試技(トライアルジャンプ)を飛ばない選択をして疲れないようにして体力を温存させて、じっくりと集中した気分で1本目と2本目とを飛べることができました。ここまで東京から山形の蔵王、また新潟の石打塩沢へと移動が続いて、疲労がたまり身体があまり動きにくい中でも、良いジャンプができたと思います」
塩沢エイブルCHINTAI杯の1本目、その風は良かった。
そこで気持ちを入れ込み身体が入り過ぎてはいけないと、自分で無難にいこうと安全策をとってしまった。それは観ていても空中感覚が苦しそうでもあった。
それらのことを反省した2本目は、ジャンプの流れを重視した最低限のことはできて、ほどよい飛距離となって6位入賞を果たした。
夏場は出社して仕事をして、その後に練習をしての繰り返しだった。
海外遠征から帰国、1か月ぶりの仕事は社会人として当たり前のことになり、これからも日々しっかりとやっていきたいと考えた。そこで疲れを取り除いて、さらにコンディショントレーニングで身体をケアしつつ、ひたむきに取り組んでいきたいと思っていた。
塩沢のエイブルCHINTAI杯で着ていたブルーのチンタイガーTシャツも爽やかで可愛くて気に入りましたと、それを着用して表彰台へとうれしそうに昇った。
「確実に飛ぶ本数を確保して、体力補強の練習を重ねて、9月10日と11日の白馬大会ラージヒル2試合に向かっていきます。実際に一戸コーチが欧州遠征でいないためにまだ出場するかどうかは決めかねていますが、出ることになった場合は思い切り飛びたいです」
蔵王と塩沢で得たものは、風の良し悪しにかかわらず我慢しながらも上手く飛べたこと。
国内の女子トップ選手が出ている試合。その強者一団の中で、とにかく対応していけるようにスキルを上げ続けることが肝心であると認識をした。
「いまの自分の現状を確認できました。これで9月を経て、10月に白馬で行われる全日本選手権で充分に戦えるように思えます。海外遠征から戻って体調もようやく落ち着いたので、また基礎的なトレーニングから積み重ねていきたいです」
欧州サマーグランプリでの好成績を自信に、国内大会における主力選手が出場する難しさがある状況において、この蔵王と塩沢の2試合ともに入賞ラインに入ってきた。この先は、全日本選手権白馬大会ラージヒル、そこで一気に本領発揮だ。
それは、ここで上位に入ることこそが冬のW杯海外遠征への第一歩となるからだ。
文・写真/岩瀬孝文
大会結果
2022年8月20日(土)
サマースキージャンプ2022 山形蔵王大会 4位
2022年8月28日(土)
エイブルCHINTAIカップ第34回塩沢ジャンプ大会 6位