ジャンプの完成を目指して
2018年11月4日
第60回NHK杯ジャンプ大会
ラージヒルの試合も3日目になると、
それぞれの選手は疲労困憊してくる。
とくに日本女子のエース高梨沙羅(クラレ)は、
初日の札幌市長杯の2本目でなんと144mを飛び、
着地での両脚ダブル着地で右膝を痛めていた。
さらに2日目のUHB杯では
137mの大きなジャンプで優勝。
そうなると懸念された右膝の痛みが誘発され、
そのために最終日のNHK杯は
欠場となってしまった。
白馬の全日本選手権ノーマルヒルで圧勝を飾り、
その勢いの波に乗っての札幌ラージヒル3連戦である。
順調に快方に向かうとはいえW杯の開幕直前、
万全を期したものだった。
札幌大倉山アイストラックの試合は、
サマージャンプから
冬のジャンプへ移り変わる時期、
これも、いよいよ定着をみせてきていた。
茂野美咲と小林諭果という
ふたりの社会人ジャンパーが飛ぶ
チームCHINTAIは
大倉山で、すこぶる元気だった。
「アプローチからサッツまでの動きは
悪くありません。どうにも考え込むのは
そのサッツのタイミングです。
それがどうしても遅れ気味になってしまい、
ただ、自分でそこまでひどいとは感じて
いないので悩ましい状況です」
ここにきて苦悩を口にした頭脳派の小林。
「風が良くてもそれを飛距離に
つなげられることができなくて、
そういうもどかしさで頭がいっぱいです。
何が足りないのだろうと、
深く考え込んでしまいます」
イメージではけっして悪くないジャンプだ。
そうであればどのようにしていくのが
ベストであるのか、
試行錯誤が続いている。
それでもジャンプ後は、
岩手八幡平から観戦に訪れていた
両親のそばに走っていって隣に座り、
あざやかな晴天、にこやかな表情をみせていた。
白馬から札幌に戻ってきて、
メンタル的に落ち着いたときを過ごした茂野は、
それこそ好ましい空中姿勢を見せていた。
「もう少し飛距離を伸ばしたかったことは
別にして、ジャンプ自体は良かったんですよ。
簡単に言うと、全体を通して
やりたいことができています」
この先、大切な雪への移行時期については
順調であると表現する。
「夏から秋、これでひと区切りですね。
雪上のジャンプへ気分も新たに
挑戦しなおしていきます。
さらに空中をスムーズに
移行していくためにも、
雪が降ってくるまでの間の
フィジカルを意識して、
細かな筋力の使い方までを考えながら
鍛えていきます」
と、あくまで、やる気を前面に出している。
そしてチャンスがやってくるのをひたすらに待つ。
女子の社会人ジャンパーとして、
全日本女子チームに加わること、
そこで成績を出していく大いなる目標を胸に、
ふたりは静かな闘志を胸に秘め大倉山から降りていった。
(文・写真/岩瀬孝文)
第60回NHK杯ジャンプ大会
1位 伊藤有希(土屋ホーム)
2位 勢藤優花(北海道ハイテクアスリートクラブ)
3位 岩佐明香(日大)
8位 茂野美咲(CHINTAI)
13位 小林諭果(CHINTAI)