第20回伊藤杯シーズンファイナル大倉山ナイタージャンプ大会

2019年3月23日(土曜日)
札幌宮の森ジャンプ競技場

シミュレーションを行う茂野美咲(2019年3月23日)
ここにきて雪解けが深刻な状況となり、 陽が照らす大倉山ラージヒルにおける 開催は困難になった。 そこで浮上してきたのが、北斜面で まだ雪がついていた宮の森ノーマルヒル。 そこで可能と決断され、迎えた土曜日夕刻。 もちろん今季引退選手を送り出す恒例の シーズン最終の大会だ。 それだけに選手と関係者や応援団の大きな声援で 会場は熱気に包まれた。

試合直前には、激しい降雪のために
開始を遅らせて、そこからのスタート。

女子では悪天候で順延となった
テレビ北海道tvh杯の優勝と、
宮様大会2試合で連勝を飾っていた
茂野美咲(CHINTAI)の国内4連勝に期待がかけられた。

1本目は大学生の岩佐明香(日大)が
詳細で首位に立つ。

そこは熟練の茂野が90.5mの
最長不倒を2本揃えて、劇的な逆転優勝!

しかも堂々の4連勝で今シーズンを締めてくれた。

W杯北欧最終シリーズには
大学生がメンバー入りとなり、
好調を維持していた茂野は悔しさを感じたが、
そこはすぐに気持ちを切り変えて、
連勝を重ねることに目標を定めて、
とことん集中していった。

 

「今日は、飛び出しでいくらか
 スピードに負けてしまいましたが、
 身体に切れがあったので
 しっかりと空中に出ていけました」

 

そう1本目の反省点を口にした。

「ここまで連勝していて、
 4連勝はしたことがなかったので楽しみでした。
 シーズンの終わりを、ちゃんと締めたいと
 思っていたので良かったです」

 

素直なままに目標達成を喜んだ。

この日優勝した茂野美咲飛型(2019年3月23日)

「W杯に出てきたいですね。
 国内でW杯代表選手が出ている試合で、
 いままでは上位に食い込んでいければ、
 ではなくて1位2位を取りに行って、
 それを勝ち取ることでなければと。
 そこで高梨選手と伊藤選手を超すという
 新たな目標ができました」

 

そして冷静に次のターゲットを見据えた。

 

「先に待つ北京五輪に間に合うように、
 それを目指してどんどんやっていきたいです」

2022北京五輪とその前年に開催される
2021オーベルスドルフ世界選手権を視野に入れ、
実績を積み重ねながら進んでいきたい、
自信にあふれた表情で力強く語った。

アップを行う小林諭果(2019年3月23日)

もうひとり、長身選手で
欧州タイプのロングジャンパー
小林諭果(CHINTAI)は
6位入賞で今シーズンを終えた。

 

彼女の弟・陵侑は、
それこそW杯でジャンプ週間4連勝に
W杯個人総合優勝を成し遂げ、
ノルウェーW杯シリーズのロウエアに
フライングジャンプのタイトルなど
W杯今季13勝を挙げて、
世界のトップに躍り出た。

それに良い格好で刺激を受けながら頑張っていた。

「そうですね、シーズンを通して
 なんというかいまいち、だったなと思います。
 開幕戦で勝利していたにもかかわらず、
 そのあと安定しないでまま進んで、
 どうなんだろうと思って。
 今日は表彰台を狙ったのですが、
 全然ダメでしたね」

 

昨年12月の優勝から勢いの波に乗り、
一気にW杯まで突き進み、
そういうプランだったが、
どうにも技術的にしっくりとこない時期があった。

 

「来シーズンはまずトレーニング方法を
 見直していきたいです。
 それは一戸コーチに相談しながら
 新しいことを作り上げていきたいと思います」

 

堅実な言い方に終始したが、
その決意と内に秘めたるものは凄まじかった。

小林諭果飛型(2019年3月23日)

ともに次へのステップと課題点を認識して、さらに
飛距離を伸ばして世界へと打っていくためには、
夏場からどのようにトレーニングを続けて
さらに工夫を積み重ねていけばよいかと頭の中が一杯だった。

 

個性あふれる社会人女子ジャンパーの茂野と小林だ。

 

このふたりの力は、海外列強勢の台頭による
停滞などを余儀なくされるいまの若手中心の
女子W杯チームに変革をもたらすことになる。

 

そこで代表入り、
そして世界の上位へ進出との想いを巡らせ
ジャンプを続けているのだ。

 

 

チームメイクのベースができあがった次年度こそ、
新進気鋭CHINTAIスキーチームの華々しい飛翔を期待したい。

4連勝でシーズンを終えた茂野美咲(2019年3月23日)

(文・写真 岩瀬孝文)