第19回伊藤杯シーズンファイナル大倉山ナイタージャンプ大会
『茂野完勝、小林は惜しくも3位』(2018年3月24日土曜)

 

表彰台で笑顔を浮かべる選手達(左から大井、茂野、小林)

 

国内大会のシーズンラストを飾る伊藤杯ファイナルが、
晴天夕暮れの大倉山シャンツェで開かれた。

これは今季のまとめの意味合いが濃い試合で、
またリタイアする選手の引退式が行なわれる。

 

国内の終盤戦でテクニックの開花がみられた茂野美咲(CHINTAI)は
1、 2本目ともにトップに立ち余裕の圧勝を遂げた。

 

シーズンを締めくくる試合で優勝を決めた茂野の飛躍

 

「アプローチの滑りが良くなり、サッツ(踏み切り)もばっちり合いました。
 それで空中で風をしっかりと受けて飛距離を伸ばすことができました。
 今シーズンの最後にいいジャンプをできて、とてもうれしいです」(茂野)

いよいよその長距離飛行技術の完成をみた茂野は思い切り飛ばしていった。

 

「竹田歩佳や澤谷夏花など一緒にやって仲間が引退するのはとてもさみしいです。
 それだけに彼女たちの分も頑張って、わたしはジャンプを続けようと思いました」(茂野)

メディアの取材中に今回で引退した選手のことを問われると、
それまでの優勝の喜びから一転、涙声になってしまった。

 

報道陣の質問に答える茂野

 

 

公式練習でトップを記録して優勝を狙っていた小林諭果(CHINTAI)は
その持ち前の集中力で、元気いっぱいに飛び出していった。

「いまだに2本ともに緊張するんです。
 やはりサッツ(踏み切り)で、つま先に乗りすぎて出遅れてしまう
 よくないクセが出て、なんなんでしょうね」(小林)

いくらか憤懣やるかたないという表情になった。

 

1本目6位から巻き返し3位となった小林

 

「このあいだエイブルスキー部のスキーツアーに連れて行ってもらって、
 長野のエイブル五竜スキー場のてっぺんから根性を入れて滑ってきました(笑)。
 とても楽しかったです。そこでスキーのセンターに乗るというウエイトバランスを
 再確認することができました。なので今日はいい滑りだったんですけど…」(小林)

どんなときでもジャンプ技術の向上にどん欲な小林だった。

 

 

 

シュミレーションをする茂野(大倉山ジャンプ競技場)

 

いまや先輩社会人として仕事とジャンプとを両立させている茂野は、
今年結婚したことでこころの落ち着きと新たな目標が芽生えてきた。

そして社会人1年目のトレーニングのあり方を学んだ小林は、
来シーズンへの手応えを感じ、様々な課題点と練習の充実を念頭に
ビッグなジャンプを夢見ていた。

 

さらなる高みへ、それぞれがひたむきに突き進む姿こそ、冬のアスリート魂そのものだ。

個性を重んじ、まだまだ伸びていく要素をふんだんに持つこのふたり。
来シーズンのおおいなる飛翔がまた楽しみになってきた。

 

(文・写真 岩瀬孝文)

 

▽第19回伊藤杯シーズンファイナル大倉山ナイタージャンプ大会
公式記録