『早朝の息吹』

2018年10月27日(土)
第97回全日本選手権ノーマルヒル白馬大会

第97回全日本選手権が行われた白馬ジャンプ競技場NH

歴史ある全日本選手権はもう少しで100回になる。
この時期、アイストラックでの勝負は、
ウインターシーズンの幕開けでもあった。
オリンピックシャンツェの長野白馬は
前夜から降雨となり、
アプローチ(助走路)に水がたまりかけ、
スキーが滑りにくくなるような状況になっていた。

 

そのため開始は午前7時。
ほとんどの選手が午前4時に起床、
これも雨でアイストラックが崩れる前に
試合を行なうためだった。
予選を行なっていた男子をまず先に進め、
その後に女子36人が飛んでいった。

 

「雨で、これであればアプローチの
滑りがよくないなと、
気になってしまって。
踏み切りのところに水が溜まって、つまるとか。
あれこれと情報がありすぎて困りました(笑)。
それで、まあ、いいやと思い切って飛んでいきました」

 

小林の飛躍(2018年11月27日)

 

1本目は15位の順位で折り返した小林諭果。
悔しさが言葉の端々に、にじんでいた。

「試合の前に行われていた合宿ではラージヒルを飛んでいて、
つかむものがありました。
ですが、なんというか抜けきれなさもあって、疲れもあり。
成績に結びつかないもどかしさがあって。
一戸コーチには、流れはよくなってきているよと
アドバイスを受けて、あとは
タイミングの遅れを解消すること、それです」

 

そう言いながら少しだけため息をついて、控え室へと戻っていった。

マテリアルを受ける小林(2018年10月27日)

 

 

雨の中のジャンプでウインドファクターが導入され、
ほぼ、公平な条件のもとでの試合進行であった。
そして2本目になると、
雲が切れて晴れてきたとたん強風が吹き荒れて、
その結果、試合途中でキャンセル、1本勝負となった。

 

おおらかに飛び1本目に9位につけて、
上位進出を狙っていた茂野美咲は、
飛びたかったと無念を口にした。

 

「ようやく白馬でいいジャンプができました。
その前の全日本女子チームの合宿中には、
もう調子が最悪で。
迷いもあって、出口が見つけられずにいました。
そこでいま一度、小川コーチと一緒に
陸上トレーニングの改善を施し、
あれこれと模索して、それを実践してみたら、
良くなったんです」

茂野の1本目は空中をスムーズに移行した
落ち着いたジャンプだった。

落ち着いたジャンプを魅せた茂野(2018年10月27日)

 

「いつもの踏み切りの立ち上がりですね、
そこでの力の入れ方に悩んでいたのです。
それが抵抗なくすっといけたので、
気持ちよく飛べました。
だから2本目が強風で飛べなくなって残念です。
もっといいジャンプができたはずですから」

そして意気揚々と宿舎に引き上げていった。

 

ふたりとも11月の海外遠征W杯出場は、
あと一歩で逃していたが、
この先はスキーの伝統国フィンランドのロバニエミでの
雪上合宿トレーニングを経て、
冬12月、名寄ピヤシリ大会の国内開幕戦に心確かに挑む。

めざすは1月に開催される札幌大倉山W杯と山形蔵王W杯の出場だ。
しかも、そこで予選を突破してしっかりと成績を残すこと。
それが使命となってくる。
明るくおおらかに、ジャンプするふたりに期待だ。

(文・写真/岩瀬孝文)

 

●全日本選手権ノーマルヒル白馬大会

1位 高梨沙羅(クラレ)
2位 伊藤有希(土屋ホーム)
3位 岩渕香里(北野建設)
9位 茂野美咲(CHINTAI)
15位 小林諭果(CHINTAI)

 

 第97回全日本スキー選手権大会/第17回SBC杯 結果報告

 第97回全日本スキー選手権大会NH 公式リザルト